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地竜謁見 (2)

オーレンから来たミルロードが、マルックソルジャーの刀に胸を突かれて倒れた。倒した敵に視線を一度も向けず機械的に次の相手を求めた、が、マルックソルジャーの首にきらめく閃光が走ると、次の瞬間その頭が首と胴体に分離して地の底を踏み鳴らした。

カーディアは、元オーレン警備隊員の死骸をちらっと眺めた。彼は、この遠征に参加する前に警備隊で服務した時代の戦友たちと「鉄槍小隊」という傭兵団を組織して大陸を歩き回っていた、と言っていた。しかし今彼の死により鉄槍小隊は全滅した。

「後ろ!」

誰かが叫んだ。薄気味悪い風が彼女の耳元を撫でた。カーディアは、身を翻すと同時に、片手の刃で相手の巨大な赤い刃を受けた。鳴り響く鉄の音、手首が痺れる感触と共に彼女の武器と相手の武器が同時に跳ね上がった。手首の痛みを無視して、彼女はもう片方の手の武器で相手の手首を狙った。骨と鎧だけで成り立ったマルックバーサーカーの腕が、耳触りな音と共に胴から分離した。

「業火の主よ...」

彼女が詠唱を始めると、目の前の空間に燃えるパアグリオの印が浮び上がった。詠唱が終わると同時に、彼女はオークの足とは信じられない速度でその横の敵に駆け付けた。残された印から炎が広がって行き、周りにいた数匹の敵に絡まって爆発した。彼女は爆発でたじろぐ相手を蹴倒し、その上に乗った。二つの刃を振り下ろし、さらに一振りするとマルックソルジャーの背骨が砕けた。

獣のように身をはじけさせつつ起上がった彼女が次に狙った相手は、黒い獅子傭兵団の一人をたった今惨殺し、後ろ向きになっているマルックナイトだった。彼女の口から自然にソウルクライと同様の叫びが流れ出た。しかしアンデッドの顔からは何ら動揺の光も読みとれない。その瞬間だった。マルックナイトの鎧と表に突き出た骨に無数の小さな傷ができた。口笛のような鋭く長い音と共にマルックナイトの鎧、そして骨片が粉々に飛び散った。

「すまなかった。オークの自尊心に傷をつけるつもりはなかった」

全身を黒い服装で染めたスペルハウラーが彼女に向けてこっそり目礼をした。カーディアが怒った顔で駆けて来るのを見ながらも、魔術師は特別に恐れたり退くようなことはなかった。二人は自然と背中を突き合わせて周りを警戒する姿になった。

「カバットか?」

ダークエルフの魔術師が抑揚のない声で問う。異種族の者がオークの伝統武術カバットを知っていることに驚きはしたが、あまり問い詰めたくはなかった。

「基礎だけ」

声を出して返事をしながら、初めてカーディアは自分がどの位疲れた状態なのか悟った。全身が傷だらけだったし、鎧も傷のない箇所はなかった。魔術師のローブのあちこちも血で染まってはいるものの、それは自身の血ではないだろう。魔術師たちが無事だったらまだ希望はある、とカーディアは自らを奮い起こした。

スペルハウラーの指先が魔法書を手早く捲り止める。彼の手先がページの一部分をつくと、深い血の色のオーラが、こちらを向けて槍を投げようとしていたプランドを食うように襲った。トカゲのように見えるプランドは、槍を持ち上げた姿勢そのまま地面に倒れて死んだ。

プリキオスという名のこのスペルハウラーは、今度の遠征に一人で従軍した。常に独りで、オーレンから来た他のダークエルフたちとも滅多に会話しなかった。しかし彼は有能な隊員だったし、他人と一緒に戦うのにも慣れているように見えた。なによりも彼は生き残った。彼は戦友だ。

「キリがないな。もっと奥へ行った方がいいぞ、オークのお嬢さん!」

二人に向かって中年のドワーフが、一人短い足を忙しく動かして走って来ながら叫んだ。巨大なケーブビースト二匹に追い回されてるのを本人は気にしていないようだったが、見守る立場では気遣うしかなかった。カーディアと魔術師がいる場所に通じる洞窟の狭い入口をドワーフが通り過ぎ、続いてケーブビーストたちがその所を通ろうとする瞬間だった。タイヤのついた大きな銀色のヤカンみたいなものが、素早くその間に割り込んだ。腕のようなヤカンの両側に付いていた斧槌が何回も軌道を描いた。しばらくすると、入口辺りにはあちこち振り撤かれた化け物たちの押しつぶされた肉片だけが残った。

「残った人々を呼び集めてもっと奥へ行こう!」

ドワーフが示す方を見ると、洞窟の狭苦しい側壁の向こうに巨大な竜の骨が、天井の岩の裂け目から射している光を反射して、薄黄色い光を発していた。


▲ 地竜謁見 (1)
地竜謁見 (3) ▼
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