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地竜謁見 (5)

(失敗したか...?)

黒い鎧を着た騎士たちが、武器を準備して隊列を取り揃え始めた。ギラン領地を脱する頃、軍に合流したその騎士たちは、アンタラスを打ち破ることに意義を共にする者たち、とだけ自分らを明らかにした。今残っている黒い騎士たちの人数は二人だった。初めに合流した人員が15名であったから、その被害は一番深刻な部類に入ると見なければならないだろう。
カーディアはその理由が分かっていた。一人一人が遠征隊員の誰よりもすぐれた技量を持っていたが、彼らはいつも最も戦闘が過酷な所で自らを顧ず戦った。もし彼らがいなかったら遠征隊はこの橋まで到逹することができなかったはずだ。

「彼らの舞踊はまるで伝説のブラックレギオンのようだな」

ギラン出身の枢機卿ドリア師は、先行して三人づつ固まりお互いに背中を突き合わせ、周りに城壁のごとくモンスターたちの死骸を築きながら前進して行く黒い騎士たちの姿を見てそう言った。

枢機卿も何か気配を感じたのか自分の杖をついて座った場所でかろうじて身を起こした。かつてアデン最初の女性枢機卿としてその高い徳の賞賛を受けた彼女は、もう年を取って衰え、同行した若い従者の助けがなければ身動きさえすることができない状態だった。

槍をまっすぐに立てて待機している騎士たちの正面から素早く何かが近付いた。騎士たちは槍を正面に狙って進み始めた。騎士たちの間をかきわけて鳥のように飛んで来たその何かは、地面に落ちて人間の肩幅程の真っ赤な痕跡を残しながら滑った。

血だ!

再び見ると、その跡の終りには偵察に出たアビスウォーカーが帰って来て倒れていた。マンティコアの皮で作った鎧と一緒にわき腹が割れ、血が滝のように吹き出していた。あっという間に彼の周りで小さくて赤い沼ができた。樞機卿が従者を急き立ててそのそばに慌てて駆けて来た。キルツという名前で呼ばれていたダークエルフは、たった今彼が通り過ぎた所に向けてかろうじて手を伸ばした。

「奴らがとても...沢山いる...その...場所で<心臓>を...見たんです...竜の頭蓋骨の下を通り...上った...右側に...」

ダークエルフの手が落ちた。その手をまるで大事な神さまの贈り物であるかのように枢機卿が取り上げた。彼女は最後まで開いていた呪われたエルフの二つの目を閉じてやり、やや低く祈祷文を詠じた。

「ダークエルフとしてはそんな祈祷はあまり有り難くないでしょう、枢機卿様。彼の魂は今頃死の女神の御許へ駆け付けているかも知れないですね」

狩人の村から来たオリビエは、わざと無粋な言葉でアビスウォーカーの死骸に惜別を告げた。若い従者はハンターに怒った顔をしたが、矢を背負っているハンターの背中は見ることができなかった。

カーディアも武器を持って橋に向けた。彼女は呼吸を整えようとわざとゆっくり走った。アビスウォーカーを追跡して来た魔物たちが橋の向こうに姿を現わして、戦闘が始まった。
討伐に出てから何回目の戦闘だろう...それがあまり嬉しくもないように感じられて、他の種族たちに余りにも染まった様だ、と呟きながらカーディアは苦笑した。

ハンターたちの護衛が歌い二刀の者が踊る。騎士たちの鎧と盾は、絶えず自分らの境遇に対して不平を吐露した。魔界のモンスターたちは、見るも巨大で重そうな身体にもかかわらず、兎のように身軽くからかう様にあちらこちらに走り回る。遠征隊員たちの首だけになった身体から血が四方に飛び、元からやや赤い洞窟中を真っ赤に染める。

カリックたちは無視して結界の心臓を捜して走りなさい!と叫ぼうとしたが、カーディアは酷い違和感を感じて堪えた。

エルフとグラディエイターが前を争って走って行き、他の人々が後に従った。ダークエルフの遺言どおり、橋の向こうには家よりもかなり大きな頭蓋骨が置かれていた。カーディアは、羊のように曲がっていた角の下を通る時ふと後を見回した。一番後に遅れていたのは、気遣っていた足の短いドワーフたちではなかった。ドワーフたちは短い足をせわしなく動かし、騎士たちすぐ後に従っていた。もっぱら最後尾を来るのは、老いた枢機卿とその従者だった。

「急いで!はやく!」

意味ない催促が繰り返される間に、いよいよ追跡者が現われた。両側に刃が付いた巨大な槍を振り回しながらデスナイトたちが二人に迫った。

「ばばあ!死にたくなければ走れ!」

渡った橋を戻ってきたオリビエが声を張り上げた。彼と他のレンジャーたちは相次いで矢を放った。彼らは弓を射るのが非常に速く、弓を一回引く間に矢を二本ずつ飛ばしているのではないか疑ってしまう位だった。彼らの射撃は正確な上に力強かった。矢は追跡者たちの鎧をまるで薄い皮のように貫いた。追跡者たちは執拗に枢機卿と従者を狙ったが、その前にハリネズミになって倒れた。やっと無事に橋を渡った枢機卿は、息が息苦しいようで胸をつかんでいた。枢機卿はレンジャーたちに感謝しようと思ったが、レンジャーたちは間を置かず洞窟の奥へ駆けて行った。

「長く堪えることはできない!早く先に心臓がある所へ!」

高く飛び上がったカリックを巨大な金槌で殴り落としてゴッドフリー卿は叫んだ。カリックは地面を一回転したが、直ぐに立ち上がって巨大な腕でゴッドフリー卿を殴り飛ばした。何かが折れる音と共にグリフォンの騎士が洞窟の底に倒れ込んだ。盾を持った彼の左腕の鎧が引き裂かれていた。腕が折れたように見えた。
倒れた敵に止めを差そうとしていたカリックのわき腹を、前後と左右で黒い騎士たちの槍が十字に貫いた。カリックは無惨な咆哮と共にひざまずいた。

さらに多くの戦友たちを失ったのち、遠征隊は二つ目の橋を渡った。橋の向こうには、典型的なオークなら歓呼の声をあげるに値する光景が展開されていた―――

無数の強大な敵が先を争ってこちらへ渡って来るために喚き立っているのだ。彼らを阻み、オークの楽しみを奪っているのは、二人のあの黒い騎士たちだった。カーディアはその騎士たちの靴でも磨いてやって、オークと敵の間を塞いだ彼らの無礼に対する報いを教えてやりたい気持ちだった。

「来ます!」

黒い鎧の中で意外な美声が飛び出した。騎士は巨大なグレートソードを振り回して近付いた敵を退けながら叫んだ。もう一人の騎士はハルバードを持ってその横を守った。

「くそ!陣形を組んでやがる」

闘技場のチャンピオンが腕を捲り上げる振りをして橋に戻ろうと思ったが、誰かの叫びが彼を留まらせた。

「結界の心臓だ!」

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