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地竜謁見 (7)

(俺は今何か言ったか?)

「プリキオス!」

人の気配を追跡して入って来た部屋の中には,、思っていたよりも多くの人々がいた。
シーケンは今自分が何と叫んだのか思い出せなかった。質問を受けた当事者であるスペルハウラー プリキオスは、息が詰まり首が折れそうな苦痛の中でも抵抗の意志を突き通しているが、シーケンは魔術師の左のまぶたがぶるぶる震えていることを逃さなかった。プリキオス本人も分かっていないはずだが、それはそのスペルハウラーが動揺する時見せる反応だった。

(俺は今何と言った?)

武器を抜いて持ってはいるが、アンタラス遠征隊の生存者たちは彼を攻撃する意思は無いように見えた。彼がオオカミなら、彼らは恐れた羊のようだった。皆同様に精錬された身体にすぐれた装備を取り揃えていたが、彼らには"今相手を必ず抹殺しきる"という力強い意思が欠如していた。
何が彼らをこのようにさせたのか分からなかったが、シーケンは確信した。ただ不審な視線でプリキオスと自分の顔を交互に観察するだけなやつらを、今なら皆殺しにすることもできる。

(ところで俺は今...?)

この状況で彼の唯一の仲間だと言えるホークアイ ゴースティンの腕は、やはり相変らず弦の緊張を解かなかったが、その口は馬鹿にしたように半ばヘラヘラと笑っていた。

「うん、オイ...」

ホークアイは、慌てているのが見え見えだという視線をシーケンに向けた。

「その質問には俺が分からない深い意味が含まれているのか?」


(くそ!今何と言ったのか全然覚えていない!)

...!

シーケンは目の前に何かを感じ、瞬間的に首をすくめた。四本の指がそれぞれ二個ずつ、彼の両瞳を狙い突き入って来たからだ!カッカとほてる感触と同時に左眼のふちが魔術師の爪にかかって裂けた。シーケンは魔術師を離した。そして血が流れ始めた。

「小さな...目でさえも充分に突く...価値がある...そうだろう?」

魔術師が咳きながら、いつかシーケン本人が聞かせた言葉を口にした。言葉が終わるのと殆ど同時にプリキオスは地面に倒れた。シーケンは魔術師のローブの裾を引いて彼を倒し、仰向けになった体に容赦なく足を降り下ろした。妙に軽快な音と共に魔術師は無惨な悲鳴を上げた。

「目を潰すことができなかったら万事を放り出して逃げろ、という話もしただろ?うん?」

シーケンは剣を装備し、魔術師の腹に差しこんだ。ローブの上で赤い染みが滲んで行った。その次は肩。魔術師がまた悲鳴を上げた。そして刃先を胸へ...

「...何のつもりだ?」

シーケンはゴースティンを睨んだ。
彼の矢が他でない自分の背中を狙っていることに気づいたからだ。

「やめろ、もう死ぬぞ」
「"ちょっと痛めつける"だけだ」
「"殺人"は俺の専門だ。お前は今そんなことをしている。それもとても中途半端にな」

常に何も心に無かったホークアイの目に生気が宿っていた。シーケンは、相手が本当に自分を撃つかも知れないと思った。いや、返ってそのようになって欲しいのかも知れない。
ムカムカする狂信徒の集団が付けてくれたあの道案内者はとても危なかった。もしかしたらこの場でつぶしてしまうのが、後に厄介な事を阻むことかも知れない......

瞬間ホークアイの視線がシーケンの背を脱して他の所に向かった。


「...この程度の蹴り」


背中越しから聞こえて来る低い女の声!

シーケンは反射的に声の主人を狙って剣を振り回した。しかし武器は相手の武器に当たって跳ね返った。同時に左わき腹に強烈な衝撃が訪れた。鈍器ではなく身体、具体的には蹴りによる打撃だった。彼は左手一つで地面をつきながら身を翻して衝撃を流した。

相手はこれ以上攻撃して来なかった。
シーケンは初めて自分の未熟な姿を見られた。

相手は血を流しながら倒れているプリキオスとその間を阻んで立っていた。鎧を着けたヒューマンの騎士なんかよりずっと堂々とした体躯の女オークだった。刃先が円形の二つの武器を右手に集めて持ち、彼女は左手で自分の眼のふちを示しトントンと示した。プリキオスに付けられた左目の傷おかげで、今彼には死角が生じている。オークはそれを指摘したのだ。それがなければ、動きが鈍いオークなんかに彼が背後をとられる事は決してなかったはずだ。

「枢機卿、魔術師を」

オークが言いつけると年を取ったヒューマンの聖職者が急いで魔術師の状態を見始めた。

「あのスペルハウラーを連れて行く」

オークは眉をひそめ、考え込んだように視線を下げた。
しばらく後、オークは首を左右に振った。

「承諾することはできない」

シーケンは鼻でせせら笑った。

「君の許諾は必要ない、オークよ」
「カーディア・ズ・ヘストゥイ」

オークは自分の名前を言い、格式ぶって片手を胸に当て腰を厳かに下げた。この意外な礼儀はどんな脅威よりもシーケンを慌てさせた。そしてつながるオークの言葉は、焦燥を越して当惑で彼を追い立てた。

「恋人を奪われて悔しい心は理解が出来るが、どうしても今此処でその仕返しをしなければならないか?」

次に口を開くためにシーケンは心の中で二十回程、そのオークを罵らなければならなかった。

「その病人みたいな声を摘むんだ!ふざけるのも大概にしろ!」
「そんな事は出来ない」
「ヘストゥイの関係する事ではない!」

シーケンはわざわざ炎の種族のリーダー格であるヘストゥイの名前を口にあげた。いつか若くして将来炎の君主の後を引き継ぐ素材と推挙されるオーバーロードがいるという噂を聞いた事がある。もしオークにも外交感覚というものがあったら、彼女は彼が意味することを気づくはずだ。
――これはダークエルフの問題で、オークの関与する事ではない。

「ダークエルフよ... 炎の君主だと言っても他人の恋愛をどうこうお節介をする権利...」

「この間抜け野郎!恋愛問題ではないと言っている!
 もう一度その言葉を口に出せば誓ってその口を引き裂く!」

カーディア・ズ・ヘストゥイは、他のオークたちと同じく岩のような顔でしばらく鼻白んだ後、呆れているかのように答えた。

「それじゃそうだと言っておく」

シーケンは彼の長い人生の中でも最悪の敗北感と挫折感を味わわなければならなかった。クレリックに治療を受けていたプリキオスがククク、と奇妙な笑い声を出した時、シーケンは目から炎が溢れ出るように怒った。彼の背後からホークアイが前に出なかったら、彼はすぐにでも魔術師に飛びかかり、後のことは考えずに今度こそその頭を飛ばしてしまっていたはずだ。

「彼は私たちが何ヶ月も前から追っていた逃亡者です。私たちもギラン政府の命令を受けたのです。すなわち、奴は領主の、ひいては王室の敵という意味です。あなたたちがその者を保護しなければならない理由はありません」

オークは魔術師を眺めた。

続いて彼女は、結界の心臓の前に集まっているすべての人々に目を通して、この部屋に通じる洞窟の方に視線を投げた。脅迫のごとく彼女の胸を狙っているホークアイの弓を見て、最後にシーケンと目が合った。シーケンはその眼光が少し前と全く変わったことを感じた。判決を下すダークエルフの長老のそれのように彼女の眼光は断固たるもので、一切の反論を受け入れないという意志に満ちていた。

「ポータルストーンは持っているか?」
「何?」

このうつろな反応はシーケンやプリキオスだけではなく、これらを見物した周辺のすべての人々が共通的に取った態度だった。

「何だ?」
「私たちはこの心臓によって地竜に会いに行く」

彼女はプリキオスの方に一歩退いた。

「もしお前達の問題を解決したいのであれば、一緒に行くか私たちが出るまでここで待つように」
「話にならない!」

シーケンは思わず叫んだ。

「彼は...」

カーディアは、この話をする瞬間を待っていたというように視線を左右に振って穏やかに微笑んだ。


「私たちの戦友だ」


ふっと取るに足りなく聞こえるこの宣言は、萎びれた羊の群れのようだった遠征隊員たちにまさに劇的な変化を引き起こした。壁に寄り掛かって座りこんでいたウォーリアたちが、よたよたと立ち上がり武器を誇示した。レンジャーたちは矢を準備し、魔術師たちは魔法書を素早く捲った。奥では老けたドワーフが鉄線を引っぱって彼の変な人形に生命の火を吹き入れた。

オーバーロードがどんな呪術を使ったのか分からないが、遠征隊員たちは既に自らに同情する生贄ではなかった。彼らは群れ成して敵を狩るオオカミであり、今その牙はシーケンとゴースティンに向けられていた。

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